KUMAMOTO EVENT REPORT vol.3|潮風にのって渡った先、湯島の猫たちと過ごす大人の遠足

KUMAMOTO EVENT REPORT vol.3|潮風にのって渡った先、湯島の猫たちと過ごす大人の遠足

今回、天草四郎観光協会の助成を受け、九州旅客鉄道株式会社が企画・実施する日帰りツアー『天草湯島ねこ島たび』に参加してきました。『特急 A列車で行こう』に乗車するツアーで、料金は大人(中学生以上)10,300円、こども(小学生)7,300円で参加できます。

熊本駅から特急列車、バス、そしてチャーター船を乗り継いだ先に待っていたのは、たくさんの猫たちとの、思いがけない出会い。

日帰りとは思えないほど満ち足りた1日を、体験レポートとしてお届けします。

汽笛とジャズに誘われ、猫たちが待つ島へ。大人のための日帰り遠足「天草湯島ねこ島たび」

くまモンが見守る、熊本駅からはじまる旅

出発当日は、朝から気持ちのいい快晴。10月とはいえ日中はしっかりと気温が上がり、湯島を歩くころには自然と汗ばむほどでした。

朝晩に残るひんやりとした空気と、昼間に残る夏の名残。そんな季節の境目のような1日が、旅のはじまりにはちょうどよく思えました。

集合場所の熊本駅白川口(東口)改札付近には、受付用のテーブルが設置され、案内もひと目でわかるように掲示されています。

順番がくると、添乗員さんからグループ番号とバスの座席番号が記されたカード付きのネームホルダー、そして列車・乗船の乗車券を受け取りました。

渡された券は有人改札でのみ通れる仕様になっていて、それだけで少し特別な旅がはじまった気分に。

発車までの時間は、駅構内の「肥後よかモン市場」さんをぶらぶらと。あちこちに顔をのぞかせるくまモンや、床に残る足跡のデザインに、思わず頬がゆるみます。

遊び心のある駅の空気に、旅の緊張も少しずつほどけていきました。

 

ジャズが流れる黒金の列車、「大人の旅」のはじまり

ホームに滑り込んできたのは、黒とゴールドのツートンカラーをまとった「特急 A列車で行こう」。座席はすべて指定席で、今回は相席からのスタートです。

車内に流れるのは、列車の名前の由来にもなったジャズの名曲「A列車で行こう」。このAには、天草(Amakusa)と大人(Adult)、2つの意味が込められているのだそう。

ガタンゴトンと揺れる走行音とメロディが重なり合い、何とも言えない心地よさに包まれます。ステンドグラス越しに差し込む光がきらめき、車窓を流れる景色と相まって、旅情がじわりと高まっていくのがわかりました。

車両は全2両編成で、1号車にはバーカウンターも備わっています。随所におもてなしの工夫が感じられる車内でした。

せっかくなので、1号車の「A-TRAIN BAR」さんで、こちらを注文しました。

●晩柑サワー 650円(税込)

果肉たっぷりのさっぱりとした口あたりが、残暑の体にすっと染み渡ります。

 

引用:特急A列車で行こう | JR KYUSHU D&S TRAINS D&S列車の旅 公式サイト

車内にはほかにも、Aセレクトハイボールやしらぬいジュースといったドリンク、天草の塩を使ったキャラメルやチョコレート、天草地アイスなどのスイーツ、さらには列車をかたどったプレミアムボトル焼酎まで、眺めているだけで心が躍るラインナップが並んでいました。

周辺には、乗車記念スタンプを押せるコーナーもありました。

さっそく専用のカードにスタンプを押してみると、浮かび上がったのは「A-TRAIN AMAKUSA MISUMI LINE」と刻まれた円形のデザイン。JR九州が観光列車を指す「D&S(デザイン&ストーリー)列車」ならではの、旅の記念になりました。

そんな列車の旅には、思いがけない「途中停車」もありました。三角駅に着く前、約20分ほど停車したのは「網田(おうだ)駅」。

熊本県内最古の木造駅舎として知られ、地元のまちづくり団体・NPO法人網田倶楽部が管理運営をしているのだそうです。

土日祝日には、駅舎内の「網田レトロ館」さんが駅カフェとして営業しており、地産地消にこだわったランチも味わえるとのこと。

秘伝のレシピで仕上げる「季節のオムカレー」は、ホテルのシェフが監修したというスパイシーながらも野菜のコクを感じる1品で、トマトやレンコン、コウイカなど、季節ごとに変わるトッピングも魅力だそうです。地元特産のネーブルを使った「ネーブルピザ」や、生絞りジュースも人気なのだとか。

ちょうど列車が停車したタイミングで、『網田オールスターズ』によるAトレインおもてなしライブが開催されていました。

列車を背に響く生演奏を聴きながら周辺をぶらぶらと歩けば、どこか懐かしいレトロな雰囲気に、まるで昭和へタイムスリップしたような気分を味わえました。

 

網田駅を出発すると、ふたたび列車はガタンゴトンと揺れながら、明治時代の趣を残す木造の「三角駅」へ。

高い天井と大きな窓から差し込む光が、旅の折り返し地点を静かに照らしていました。

 

海と空がひとつになる、天草のごちそうランチ

三角駅からバスに揺られて向かったのは、上天草市前島の複合リゾート施設「リゾラテラス天草」さん。全席オーシャンビューのレストランで、いただいたのはこちら。

●天草産季節の魚のランチコース

はじめに運ばれてきたのは、「カルパッチョ仕立てのサラダ」。シャキシャキとした野菜の上に新鮮な魚の身がのり、口に運ぶたびに爽やかな酸味が広がります。

続く「アーモンドミルクベースのスープ」は、ガーリックがほんのりと効いていて、やさしさの奥に深みを感じる味わい。

名物の「塩パン」は、かじった瞬間にバターがじゅわっとあふれ出し、表面のざくっとした焼き目が香ばしさを引き立てます。

メインは「天草産の真鯛(まだい)のグリル」。新鮮さを感じさせる弾力があり、噛むたびにしっかりとした食感が楽しく、バジルソースの香りが魚の旨みをふわりと包み込みます。窓の外には穏やかな海と島々が広がり、食事の時間そのものがごちそうのように感じられました。

 

食後は施設内をぶらり。

 

「天草塩パンラボ」さんでは、焼きたての塩パンを3種類購入しました。

 

●人気No.1 プレーン 162円(税込)

プレーンはシンプルに小麦の旨みを感じられる味わいで、かじるとバターがじゅわりとあふれ出します。

 

●人気No.2 塩キャラメル 259円(税込)

割ってみると、とろりとキャラメルがあふれ出し、塩キャラメルは甘じょっぱさがクセになる味わいでした。

 

●人気No.3 ショコラ 291円(税込)

断面にはごろごろとチョコレートが詰まっていて、ショコラは厚みのあるコクを楽しめました。

それぞれ違った魅力があり、3種類とも食べ比べてみるのがおすすめです。軽くリベイクすると、外側はさらにサクッと香ばしく仕上がりますよ。

ほかにも海中水族館やイルカクルージング、ボルダリング体験、レンタサイクル・レンタカーのスポットまであり、時間が許すならもっと長居したくなる場所でした。

 

潮風とエンジン音、湯島への静かな船旅

ランチのあとは再びバスに乗り込み、鳩の釜港へ。そこから「湯島商船・昭和丸」のチャーター船に乗り換え、いよいよ湯島に向かいます。

船の揺れはほとんどなく、行きも帰りもあえてデッキに腰掛けることに。エンジン音を聞きながら、潮風と太陽をたっぷり浴びる時間は、思いのほか気持ちのいいものでした。

この日は快晴で、海はどこまでも澄み渡り、遠くに見える島原の島影までくっきりと浮かび上がっていました。

約30分の船旅を経て、あっという間に湯島港へと到着しました。

 

猫が主役の島に上陸

湯島は、有明海のほぼ中心に浮かぶ、周囲4キロメートルほどの小さな島です。

上天草市 公式サイト

江戸時代には天草四郎率いる島原・天草一揆の作戦会議が行われた場所として知られ、「談合島」という別名を持つ、歴史的な背景を持つ島でもあります。

現在は約260人の島民が暮らし、ウニやアワビなどの海産物が水揚げされる漁業の島として知られる一方、猫の多さから「猫の島」の愛称でも親しまれるようになりました。

島内には上天草市役所湯島出張所や診療所、郵便局のほか、旅館日の出荘や乙姫邸、ゆがふといった宿泊施設もあり、小さいながらも生活のすべてが詰まっていました。

 

散策では、「湯島猫神様」のあたりから湯島交流施設「シーグラス」の方まで足を延ばし、「湯島灯台」や「諏訪神社」にも立ち寄りました。

1916年の初点灯から100年以上にわたって船を見守り続ける湯島灯台は、「恋する灯台」にも認定されているのだそう。

諏訪神社の境内には、推定樹齢300年のイチョウの木も立っていて、歴史の重みを感じさせてくれました。

 

灯台や神社までの道のりには、思った以上に急な坂道がありました。

日差しも強く水分補給が欠かせませんでしたが、途中には自動販売機が複数あり、海女料理が味わえる「乙姫屋」さんや、セルフ形式でくつろげる「yushimacafe(湯島カフェ)」さんなど、ひと息つけるスポットもありました。

 

ちなみに、港からほど近い「yushimacafe(湯島カフェ)」さんは、かつて「ねころびcafe」だった場所をリニューアルしたお店。海や猫に癒されながら、セルフ形式で自由にくつろげるのが魅力です。

店内には、ドリンクスペースのほか図書コーナーやキッズスペース、湯島猫部グッズなどのお土産コーナー、自由に書き込めるノート、サービスの飴まで揃っていました。

入り口には洗い場と石鹸も用意されていて、猫に触れたあとの手洗い場としても重宝しましたよ。

島の頂上には、雲仙や島原、天草を一望できるという「峯公園」もあるそうで、今回は時間の都合で足を延ばせませんでしたが、次に訪れる楽しみがまたひとつ増えました。

 

島のあちこちで出会った、人懐っこい猫たち

船を降りた瞬間、出迎えてくれたのはたくさんの猫たち。

出会う猫のほとんどが、人懐っこく近寄ってきます。おやつをねだるように体をすり寄せてきたり、お腹を見せてごろんと寝転んだり。中でも印象に残っているのは、親子の猫との出会いです。

最初は警戒していた子猫も、おやつを前にすると少しずつ心を開き、気づけばすっかり懐いてくれていました。

このときのおやつは、バスで相席になった女性が分けてくれたもの。参加者の中には、あげる用の紙皿を持参している方もいたほどです。

湯島を訪れるなら、猫用のおやつを購入するか、持参することを心からおすすめします。

散策の道中では、神社へ向かう途中で出会った猫が気づけば後をついてきてくれたり、帰り際には、近づいてきた猫を撫でると気持ちよさそうにお腹を見せてくれたりと、島のあちこちで人懐っこい猫との触れ合いを楽しめました。

2時間という自由散策の時間も、気づけばあっという間に過ぎていました。

バスの運転手さんや添乗員さん、参加者のみなさんまで、関わる人すべてがあたたかく、猫に触れながら自然と会話が生まれる場面もたくさんありました。

バスで相席になった女性とは湯島でもすっかり仲良くなり、おやつを分けてもらったのも、そんなきっかけからです。知らない者同士が自然と打ち解けていく、あたたかな空気に包まれた散策時間でした。

 

旅の終わりに、藍のあまくさ村で見つけた天草の余韻

湯島を後にし、再びバスに揺られて向かったのは「藍のあまくさ村」さん。

高さ15メートルの天草四郎像がそびえる、四郎広場が目印の物産館です。お買い物の時間は約30分ほど用意されていました。

店内には新鮮な海産物や特産品、デコポンを使ったお菓子などがずらりと並び、名物「天草四郎ちくわ」の工場見学も楽しめます。

店内でひと息ついたあとは、「島cafe」さんでこちらを購入しました。

●島ジェラート ダブル(ミックスベリー・マンゴー) 600円(税込)

暑さの残る体にしみわたるすっきりとした甘さでした。

試食でいただいた「天草大漁焼」も気になる美味しさで、天草のいりこや国産あられ、自家焙煎ピーナッツに、天草のにがりを使った丸大豆醤油を隠し味にした、丁寧な仕上がりの1品でした。

お土産には、「天草佃煮あおさのり」と「天草塩あめ」をいただき、最後まで天草の味を楽しみながら、熊本駅へと帰路につきました。

 

また会いに行きたい、大人の遠足

黒とゴールドの列車に揺られる高揚感、海を望むレストランでの満ち足りたランチ、そして猫たちが暮らす湯島でのかけがえのない出会い。「天草湯島ねこ島たび」は、移動のひとときさえも思い出になる、1日まるごと特別な旅でした。

気づけば新しい出会いに恵まれていたのも、このツアーならではの魅力。猫との触れ合いを求めている方はもちろん、童心に帰って「大人の遠足」気分を味わいたい方にも、心からおすすめしたい日帰り旅です。

最後に、ひとつだけ覚えておきたいメモを。

湯島は入り組んだ道や段差、草道も多いため、長袖・長ズボンなど動きやすい服装がおすすめです。蚊に刺されることもあったので、虫除けやかゆみ止め、手を拭けるウェットティッシュがあると安心。

カフェや売店は曜日・時間帯によって営業していないこともあるため、心配な方は軽食を持参しておくとよさそうです。また、島内の自由散策では私有地には入らないこと、出たゴミは持ち帰ることもマナーとして大切です。猫たちは自由気ままに暮らしているため、天候などによっては姿を見せてくれないこともある点も、あらかじめ心に留めておきたいところです。

 

「天草湯島ねこ島たび」は、九州旅客鉄道株式会社がこれまでにも企画してきたオリジナルツアー。今回のように不定期での開催となるため、次回の催行日は本記事公開時点では未定ですが、気になった方はJR九州トラベルデスク【公式】のInstagramや、JR九州オリジナルツアーの公式サイトをこまめにチェックしておくのがおすすめです。

機会があればぜひ、熊本駅から少しだけ遠くへ。猫たちに会いに行ってみてください。