
偉人が歩いたまち、熊本

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偉人が歩いたまち、熊本 vol.1|小泉八雲熊本旧居で出会う軌跡。熊本で過ごした約3年間の記憶をたどって。
熊本の街並みは、実は多くの偉人が訪れた町であることをご存じでしょうか。
なかでも、怪談集「耳なし芳一」や「雪女」で知られる作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)もそのひとり。
連載企画「偉人が歩いたまち、熊本」では、そんな熊本にゆかりのある歴史人物の足跡をたどります。
第1回目は、八雲が実際に暮らした「小泉八雲熊本旧居」へ。
静かな住宅街の一角に残るこの家から、彼が見た日本の美しさを感じてみましょう。
八雲が紡いだ物語と、熊本に残る静かな記憶。「小泉八雲(こいずみやくも)熊本旧居」
小泉八雲とは
ところで、みなさんは「小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)」について詳しく知っていますか?
「怪談話で有名な人」「たしか明治時代の人だったような…。」
そんなふうに、名前は聞いたことがあっても詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。実は筆者もそのひとりです。
まず初めに、小泉八雲について、軽く説明します。
【小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)】
・出身地:旧イギリス領イオニア諸島レフカダ島
・生年月日:1850年6月27日
・死亡年月日:1904年9月26日(享年54歳)
ヨーロッパやアメリカ、日本と様々な国と地域に移り住んだ記者・作家。異文化への興味が強く、理解を示し、晩年は日本に帰化。日本の文化や民間伝承を海外に伝えた功績をもつ。
「え、日本人じゃなかったの?」と驚いた方もいるかもしれません。明治時代以降、欧米を中心とした異文化との交流が盛んになり、日本文化と他文化が混在していました。
そんな時代の流れの中で、ハーパーズ・マガジンの特派員として来日し、のちに英語教師としても活躍したのが小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)です。
熊本で過ごした小泉八雲
1891年(明治24年)11月、小泉八雲は第五高等学校(現在の熊本大学の前身校)の英語教師として熊本の地を訪れました。
約3年間をこの地で過ごした彼は、どのような日々を送り、そしてどんな作品を生み出したのでしょうか。
熊本は当時、武士の文化が色濃く残る城下町。規律を重んじる雰囲気や、控えめながらも誇り高い人々の気質に、八雲は強く惹かれました。
「礼儀正しく、物静かで、そして芯がある」。そんな熊本人の気質を、彼はとても尊敬していたようです。
また、熊本の自然や街の様子にも深い関心を示し、日々の観察を記録に残していました。熊本滞在中、彼が執筆された最も代表的な作品のひとつが「知られぬ日本の面影(Glimpses of Unfamiliar Japan)」です。
この作品は、彼が日本各地で見聞きした出来事や人々とのふれあいを、外国人の視点で細やかに描いたエッセイ集で、熊本での生活もいくつかの章に登場します。
八雲の暮らしと息づかいを感じて
旧居には、小泉八雲に関するさまざまな展示がありました。
彼の熊本での軌跡や、夏目漱石との交流、さらには八雲がこの地でどのような日々を過ごしていたのか。
そうしたテーマごとに丁寧に紹介されており、見ているうちにワクワクが止まらず、気づけば何度も部屋を行き来していました。
なかでも印象的だったのは、「ちりめん本(Crepe Paper Books)」の展示。
これは、長谷川武次郎という出版人が海外向けに作った本で、しわを寄せたクレープのような紙に、色をつけた木版画の絵が描かれているのが特徴です。
八雲の作品もこの形式で出版されており、日本の物語や風景を、まるで絵巻物のように味わうことができます。ページをめくるたびに、当時の読者が感じたであろう「異国の日本」へのときめきが、そっと伝わってくるようでした。
そして何より心に残ったのが、神棚と書斎の存在でした。
八雲は「神棚のある家」に特別なこだわりを持っていたそうで、この旧居にも、その静かな祈りの場が今なお残されています。
さらに、彼が好んだという「夕日が差し込む方角」。南西の隅に設けられた書斎も印象的でした。
これは松江での暮らしと同じ配置であり、彼にとって書くこと、そして自然と調和して過ごすことが、いかに大切だったかが伝わってきます。
街の喧騒から少し離れた場所に、静かに佇む明治の住まい。部屋の空気にそっと耳を澄ませば、八雲の息づかいが今も聞こえてくるようでした。
そして、見学の最後に目にしたのが「お客さまノート」。そこには、英語をはじめとした、さまざまな国の言葉で綴られた感想が並んでいました。
異国からやってきた1人の作家が、日本の文化を愛し、丁寧に見つめ、書き残したこと。それが時代を越えて、今も世界の人々の心に届いていると感じさせてくれる、小さなノートでした。
街のにぎわいの中に残された歴史
今回訪れた「小泉八雲熊本旧居」は一般公開されており、当時の暮らしをしのぶことができる貴重な場所です。
熊本市電「水道町駅」から徒歩約4分。鶴屋百貨店のすぐ隣に、そんな歴史ある住まいが静かに佇んでいます。
街のにぎわいのすぐそばに、明治時代の空気と多文化の香りを残す空間。小泉八雲が実際に暮らした部屋に身を置くと、彼のまなざしや暮らしぶりがそっと感じられるようでした。
最後に
小泉八雲は、異文化への深い理解を持ち、日本の文化や伝統を世界に伝えた特別な存在です。熊本で過ごした約3年間は、彼の人生と作品に大きな影響を与え、その足跡は今も「小泉八雲熊本旧居」に色濃く残っています。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)について「もっと知りたい」と思った方は、ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
INFORMATION
店名:
小泉八雲(こいずみやくも)熊本旧居
住所:
熊本県熊本市中央区安政町2-6
電話番号:
096-354-7842
営業時間:
9:30〜16:30
定休日:
月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
一人当たりの予算:
〜¥1,000 ※年齢により入場料が異なります。詳しくはwebをご確認ください。
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