偉人が歩いたまち、熊本 vol.6｜宮本武蔵、最期の地へ。熊本・武蔵塚公園で感じる静かな余韻

静かに眠る剣豪。武蔵の影が今も揺れる場所「武蔵塚（むさしづか）公園」

宮本武蔵とは

日本で知らぬ人はいないといわれる剣豪・宮本武蔵（みやもとむさし）。

二刀を自在に操り、数々の真剣勝負を生き抜いたその名は、今なお日本人の心に深く刻まれています。

そんな武蔵が晩年を熊本で過ごし、熊本市内にはゆかりの地や墓所が複数残っていることをご存じでしょうか。

まずは、熊本との歩みに触れる前に、彼の人生を簡単に振り返ってみましょう。

【宮本武蔵（みやもとむさし）】

・出身地：播磨（現在の兵庫県）　※諸説あり

・生年月日：1584年

・死亡年月日：1645年6月13日（享年 62歳）

「巌流島の戦い」で知られる日本史上屈指の剣豪であり、二刀流を極めた兵法家。数多くの勝負に生き残り、“生きること自体が武芸”のような人生を歩んだ人物として、今もなお語り継がれている。

その武蔵が晩年、熊本藩主・細川忠利の招きで熊本へ移り住んだことは、意外と知られていません。

熊本では剣術の指導にとどまらず、軍学・兵法・絵画・書など多方面の才能を発揮し、後世に残る名著「五輪書」を著したのもこの地でのこと。

武蔵の哲学が最も深まり、円熟を迎えた時代でもありました。

閑静な住宅地の中に

今回訪れた「武蔵塚公園」は、JR武蔵塚駅から約徒歩5分の場所にあります。市街地からのアクセスも良く、散歩気分で立ち寄れる距離感。少し高台にあるため、周囲の穏やかな街並みを眺めながら気持ちよく過ごせます。

駐車場も整備されており、車での来訪も安心です。

宮本武蔵の墓所

公園に入るとまず目に飛び込んでくるのは、園の中心に堂々と立つ宮本武蔵像。凛として立ち、武蔵が今もなお公園全体を見守っているような威厳を放ちます。まさに「天下無双」と称された剣豪の存在感そのものです。

像のそばには、武蔵が自らの剣法を「二天一流」と名付けたことや、剣法の基本となる「五方の形」についての解説パネルが置かれています。

また、彼の兵法思想をまとめた代表的な伝書「五輪書」についての説明もあり、武蔵の精神世界に触れられる場所になっています。

さらに園内の奥へ進むと、自然に包まれた小さな丘の上に武蔵の墓所「武蔵塚」が静かに佇んでいます。派手な装飾や大きな案内板はなく、ただその一角だけが時間の流れから切り離されたように静か。

木漏れ日が柔らかく差し込み、苔の香りがふっと立つその空間は、どこか神秘的で、武蔵が今もそこに息づいているような雰囲気を感じました。

公園にたたずむ武蔵の影

武蔵塚公園は、宮本武蔵の墓所を中心に整備された静かな広場で、地域の日常にすっと溶け込むような落ち着いた空間です。

武蔵は1645年、熊本で静かにその生涯を閉じます。亡くなったのは、金峰山の麓にある「霊巌洞」で「五輪書」をまとめ上げたすぐ後のこと。

弟子たちは武蔵の遺志を尊重し、この地（現在の熊本市北区武蔵ヶ丘）に「武蔵塚」として彼を丁重に埋葬しました。

この場所は、かつて細川藩ゆかりの一帯であり、武蔵を「天下無双の剣豪」と称えた弟子・寺尾孫之丞（てらおまこのじょう）の屋敷跡ともされ、武蔵ゆかりの地として大切に守られてきました。

公園として整備されたのは近代になってからですが、静穏な雰囲気が漂い、武蔵が眠る丘の周囲には時折、凛とした空気が流れます。

最後に

熊本は、宮本武蔵が剣豪としてだけでなく、一人の芸術家・思想家として完成した土地だと言われています。

その最期を迎えた熊本で、静かに武蔵を見守り続けてきた武蔵塚公園。派手な観光地ではありませんが、武蔵という人物の本質に最も近づける場所かもしれません。

訪れた日、公園に入る前に、気迫ある声と竹刀がぶつかる音が聞こえてきました。園内に足を進めると、剣道の練習に励む町の少年たちの姿が。

武蔵像の見つめる先で剣を振るう少年たちを見ていると、「武蔵の精神は今も受け継がれているのかもしれない」と胸が温かくなりました。

次回は、武蔵が晩年に籠り「五輪書」を書き上げた場所、金峰山麓の霊巌洞で、武蔵の思想と「五輪書」の核心を深掘りしていきます。

引用：
宮本武蔵、伝説の剣豪が熊本で残した名言・遺訓～独行道より～ – くまもとものがたり
西の武蔵塚 | 観光地 | 熊本市観光ガイド
宮本武蔵 – Wikipedia

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