偉人が歩いたまち、熊本 vol.3|夏目漱石内坪井旧居で出会う、猫と文学とユーモアと。

偉人が歩いたまち、熊本 vol.3|夏目漱石内坪井旧居で出会う、猫と文学とユーモアと。

偉人が歩いたまち、熊本

WRITTEN BY
ICHIMI
ICHIMI
  1. 偉人が歩いたまち、熊本 vol.3|夏目漱石内坪井旧居で出会う、猫と文学とユーモアと。
    #3

    この記事を読んでいます

    偉人が歩いたまち、熊本 vol.3|夏目漱石内坪井旧居で出会う、猫と文学とユーモアと。

  2. 偉人が歩いたまち、熊本 vol.2|教壇に立った小泉八雲。五高記念館に残る、八雲と漱石の息吹
  3. 偉人が歩いたまち、熊本 vol.1|小泉八雲熊本旧居で出会う軌跡。熊本で過ごした約3年間の記憶をたどって。

明治時代を代表する文豪・夏目漱石。
「吾輩は猫である」「こころ」などの名作で知られる彼が、約4年間を熊本で過ごし、その経験が作品に大きく反映されていることをご存じでしょうか。

第3回の連載は、漱石が実際に暮らした「夏目漱石内坪井旧居」へ。

時には猫たちが気ままに現れ、教科書では知ることのできない“漱石の素顔”に触れていきたいと思います。

名作の裏にある熊本の姿。4年間の物語が息づく「夏目漱石(なつめそうせき)内坪井旧居」

夏目漱石とは

日本で知らない人はいないであろう文豪・夏目漱石。しかし、代表作『こころ』『吾輩は猫であるを書いた人、昔の千円札に載っていた人…。と、ぼんやりと記憶している人も多いのではないでしょうか。

ここで改めて、夏目漱石について簡単に説明します。

【夏目漱石(夏目金之助)】

・出身地:江戸牛込馬場下横町

・生年月日:1867年2月9日

・死亡年月日:1916年12月9日(享年49歳)

夏目漱石は明治時代の文豪で、英語教師としても活躍。人間心理や近代化に揺れる日本人像を鋭く描き、日本近代文学の礎を築いた人物。

本名は「夏目金之助」。「漱石」というペンネームは中国の故事「漱石枕流」から引用されました。「屁理屈で言い逃れる」「負け惜しみが強い」といった、自身の性格を茶化して付けたと言われています。

また、ひとつ前の記事でも紹介した通り、文豪としてだけでなく、第五高等中学校など教育の場でも活躍した漱石。

そんな多才な彼が熊本でどのような日々を送っていたのか。詳しく見ていきましょう。

 

熊本で過ごした夏目漱石

1896年(明治29年)4月13日、漱石は小泉八雲の後任として第五高等中学校(現在の熊本大学の前身校)の英語教師として熊本の地を訪れました。

英国留学までの約4年間を熊本で過ごした漱石は、どのような暮らしを送っていたのでしょうか。

当時の熊本は、一部地域を除き緑豊かで、漱石は熊本を「森の都」と呼び、心地よい場所と評していました。

プライベートでは中根鏡子と結婚し、2人の間に長女・筆子が誕生。

そして、教師としては同僚や真面目な生徒たちと交流を深めました。こうした人々との出会いや経験が、後の漱石の小説に大きく影響を与えました。

また、漱石が生涯に詠んだ俳句のうち、およそ3分の2が熊本で生まれたものです。五高の生徒たちと紫溟吟社という俳句の集まりを作り、俳句を詠んでいたようです。

この暮らしを漱石は大層気に入っていたため、もし英国留学を命じられなければ、もっと長く熊本に腰を据えていたかもしれません。

 

猫と歴史で溢れる旧居の中で

夏目漱石内坪井旧居には、熊本時代の漱石にまつわる展示が並んでいます。

五高時代の資料や、プライベートなエピソードをじっくり見て回っていると…。

「にゃーん」

どこからともなく猫の鳴き声が。周りを見渡すと、3匹の猫がのんびりとくつろいでいました♪

ここには「ボランティア猫さん」がいるそうで、「吾輩は猫である」と不思議な縁を感じます。

漱石は東京の家で犬と猫を飼っていましたが、犬には立派な名を与え、猫には最後まで名前を付けなかったそうです。

もしかしたら、漱石は犬派では?と思うような面白いエピソードがあります。

内坪井の家で夏目家は、大きな犬を飼っており、漱石はこの犬を大変かわいがっていました。ですが、この犬には吠え癖があり、近所から苦情が来ていました。そんな中、通行人を嚙んでしまい、警察が介入する始末。ですが、犬にぞっこんの漱石は「犬は利口で人相のよい人には吠えるはずがない。嚙みつかれるのは人相が悪いか犬に敵意がある人で、犬だけを責めることはできない」と反論。

ところが、ある晩、家に帰ってきた漱石はこの犬にひとしきり吠えられた後、嚙みつかれたそうです。

ユーモラスで人間味あふれる漱石の一面が垣間見える出来事ですね。

こうしたプライベートの漱石を知ることで、教科書だけでは分からない人物像が浮かび上がってきます。

旧居には、こうした貴重な資料が数多く展示されており、漱石ファンでなくてもワクワクが止まりません。

 

街中で出会う猫と漱石の影

今回訪れた「夏目漱石内坪井旧居」は一般公開されており、漱石が熊本で住んだ家のひとつです。

バス停「壺井橋」から徒歩約2分。また、駐車場も約6台分のスペースがあるので、車でのアクセスも可能です。

中央区というにぎやかな街中にありながら、建物や庭は情緒にあふれ、猫とともに楽しく歴史を感じることができます。

 

最後に

日本を代表する文豪の1人である夏目漱石

彼が熊本で過ごした約4年間は『草枕』や『吾輩は猫であるなどの作品に大きく影響するとともに、彼の人生にも大きな転機をもたらしました。

その足跡を猫とともにたどりながら歴史に触れることのできる「夏目漱石内坪井旧居」

皆さんもぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

INFORMATION

店名:

夏目漱石(なつめそうせき)内坪井旧居

住所:

熊本市中央区内坪井町4-22

電話番号:

096-325-9127

営業時間:

9:30~16:30

定休日:

月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日

一人当たりの予算:

〜¥1,000 ※年齢により入場料が異なります。詳しくはwebをご確認ください。

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。