
偉人が歩いたまち、熊本

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偉人が歩いたまち、熊本 vol.5|ジェーンズ先生、熊本へ。彼がもたらす近代教育の軌跡とは
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もし、明治時代の熊本にタイムスリップしたら……きっと町の人々に混じって、西洋風の背の高い先生を見かけるはず。その人こそ、アメリカからやってきた教師ジェーンズ。
学校で熱心に教育に取り組み、日々の暮らしに新しい文化を届けた彼は、熊本、そして日本にたくさんの「はじめて」をもたらしました。
第5回の連載は、ジェーンズの軌跡をたどるべく「熊本洋学校教師ジェーンズ邸」を訪ねます。
彼は一体熊本の地で、どんな影響を残していったのか、一緒にたどっていきましょう。
目次
外国人教師ジェーンズの足跡たどる、挑戦と慈愛の始まりの場所「熊本洋学校教師ジェーンズ邸」
外国人教師ジェーンズとは
明治の日本。海外との交流が一気に広がり、社会が大きく動き出した時代に、1人のアメリカ人が熊本へやって来ました。
その人物こそ、軍人から教育者へと転身した「リロイ・ランシング・ジェーンズ」です。まず初めに、彼について簡単に説明します。
【リロイ・ランシング・ジェーンズ】
・出身地:アメリカ合衆国オハイオ州
・生年月日:1838年3月27日
・死亡年月日:1909年3月27日(享年71歳)
1871年から1876年まで、熊本洋学校で教師を務めたジェーンズ。授業はすべて英語、しかも彼ひとりで教壇に立ち続けました。その熱意に応えた生徒たちの中からは、日本のキリスト教史に名を刻む「熊本バンド」が誕生。また、博愛社(後の日本赤十字社)の設立にも深く関わり、日本の近代史に大きな影響を与えた。
ジェーンズはもともと、南北戦争で北軍の将校として戦った人物。
戦後は農業に携わっていましたが、熊本洋学校教師として招聘され、教育者として再び新たな道を歩み始めます。
熱心な教育と暮らしの手助け
熊本洋学校に赴任したジェーンズは、なんとすべての授業を英語で行いました。
厳格ながらも情熱的な教え方に、やがて多くの生徒が心を惹かれていきます。
そして、彼の影響は学校の中だけにとどまりません。西洋野菜やパン、牛乳、牛肉といった食文化を紹介や、印刷機や農具を持ち込み生活を便利にしたりと、熊本に住む人々の暮らしの中に新しい風を吹き込みました。
1874年(明治7年)、洋学校が存続の危機に立たされますが、県や旧藩主細川護久の支援で継続が決定。ジェーンズは演説で「国家の富強は教育にあり」と訴え、教育の重要性を強く語りました。
また、女子生徒の受け入れを認めたのも彼の大きな功績のひとつ。明治のはじめに「男女が同じ教室で学ぶ」ことはとても珍しく、日本の教育史の中でも先駆的な取り組みでした。
その後、熊本洋学校は廃校となってしまいますが、ジェーンズは生徒たちの未来を思い、多くを同志社英学校へ送り出しました。
こうして彼は、教育と文化の両面から熊本に大きな足跡を残したのです。
日本赤十字社の起源となったジェーンズ邸
1877年(明治10年)、西南戦争が勃発すると、熊本城は薩摩軍に包囲され、町は大きな被害を受けました。
そんななか、ジェーンズがかつて暮らした熊本洋学校の教師館は戦火を免れ、戦後は征討総督・有栖川宮熾仁親王の宿泊所として利用されます。
ちょうどその頃、佐野常民らが「敵も味方も区別せずに救いたい」と願い出て、ここから博愛社が生まれました。
これがのちの日本赤十字社のはじまりであり、ジェーンズ邸は日本の近代史の転換点を見守った建物でもあったのです。
耽美な建物に残る歴史の足跡
今回訪れた「熊本洋学校教師ジェーンズ邸」は、熊本地震後、移築復旧することとなり、建築当初の姿に近づけた貴重な建物です。
熊本市電市立体育館前から徒歩約1分。穏やかな空気流れる水前寺公園の中にその存在感を放っています。
西洋風の窓や間取りからは、当時の国際交流の雰囲気が感じられ、建物そのものにもときめきを覚えます。
館内にはジェーンズの歩みや博愛社の資料だけでなく、昔、建物で使われていたシャンデリアや丸柱、手すりの部品なども展示されています。
地震で傷んでしまったものたちですが、当時の姿を思い描く手がかりとして、来館者を迎えてくれます。
最後に
熊本で教育に尽くしたジェーンズは、生徒たちの未来を思い、日本が新しい時代へ歩み出す姿をそっと支えました。
彼の教えを受けた若者たちは、やがて各地でその力を発揮し、教育や社会の発展に大きな足跡を残していきます。
ジェーンズがまいた種は、彼の時代を超えて広がり、日本の近代史の中に静かに息づき続けています。
外国人教師ジェーンズについてもっと知りたいと思った方は、ぜひ一度、「熊本洋学校教師ジェーンズ邸」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
INFORMATION
店名:
熊本洋学校教師ジェーンズ邸
住所:
熊本市中央区水前寺公園12-10
電話番号:
096-382-6076
営業時間:
9:30〜16:30
定休日:
月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
一人当たりの予算:
〜¥1,000 ※年齢により入場料が異なります。詳しくはwebをご確認ください。
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