
絵本は、子供が読むものというイメージが強いかもしれません。
大人になってからも、絵本を読むと子供の頃を懐かしく思い出したり、今だからこそ感じられる「気づき」があったりします。
また、親子で一緒に楽しんだり、声に出して読んでみることで読書体験を誰かと共有できるのも大きな魅力のひとつです。
今回は、思わず大切な誰かに手渡したくなる、そんな絵本が揃った移動型絵本屋さんを紹介します。
今こそ読みたい、おすすめの絵本も教えてもらいました!
目次
子供も大人も楽しめる豊かな絵本の魅力を伝える「出張絵本屋モフbooks(ブックス)」
今回の出張場所は「ミフネ古本市」
「出張絵本屋モフbooks」さんは、イベントなどを中心に出店されています。
そこで今回取材に向かったのは、県民にとっては”コストコがある所”としてお馴染みの御船町です。
「本町通り」にある、江戸時代に建てられた大型町家「御船街なかギャラリー」で「ミフネ古本市と活版印刷」というイベントが行われました。
重ねた年月の深さが感じられる空間の中で、たくさんの出展者さんたちが本を並べています。
この日は雨にもかかわらず、大勢のお客さんが訪れていました!
その一画に、さまざまな絵本が並べられたお店を発見。
「出張絵本屋モフbooks(ブックス)」として活動されている吉田さんです。
さっそく絵本を拝見させていただきましょう。
国内外の新刊絵本が揃っています。
何だか深そうな絵本たち…気になります。
こうやって並んでいるのを見ると、絵本ってとても色鮮やかで、思わず手に取って読んでみたくなるような魅力を持っているなと感じます。
絵本作家の方のグッズも少し置いてありました。
ブックカバーは、福岡の「ブックカバー処 本の装ひ堂」さんのものです。
幼稚園教諭から絵本屋さんへ
気になる絵本がたくさんありますが、私がまず気になるのは、吉田さんがどうしてこの出張絵本屋を始めたのかということ。吉田さんに、これまでの道のりについて伺いました。
———まずは、吉田さんが絵本を好きになったきっかけを教えてください。
幼稚園教諭になるために進んだ大学の授業で、先生に絵本を読み聞かせてもらったことがきっかけです。
誰かに絵本を読んでもらうって、なんてあたたかくて素敵な体験なんだろうと感じました。
その後、その先生のゼミで絵本のことを学ぶうちに絵本が好きになり、自分でも絵本屋さんを巡るようになりました。
———“読み聞かせてもらう”という体験を通して絵本を好きになっていったんですね!本自体は、子供の頃からお好きだったのでしょうか?
両親が本好きだったので、自分でも興味を持って読んだりはしていました。
でも親に本を読んでもらったことはなかったので、子供の頃に絵本を読み聞かせてもらって育った人に対しては憧れがあります。
そういう経験のある人は、すごく心が豊かであたたかい人が多いと感じるからです。
お店の名前の「モフBooks」も、毛布にくるまって絵本を読んでもらうようなあたたかい時間を届けたいという思いでつけました。
———毛布の「モフ」だったのですね!親が自分のためだけに読んでくれる絵本は、子供にとって内容だけではなく、その時間自体が大切なものになるのだと感じました。大学を卒業された後はどのような道に進まれたのですか?
大学卒業後は、約16年間幼稚園教諭などの仕事をしました。2016年に店舗で絵本の専門店を始め、2018年から今の形の移動型絵本屋に移行しました。
———最初は店舗を持っていたんですね!どうして移動型に移行しようと思われたんですか?
店舗のある絵本専門店だと、絵本が好きな方は来てくださるのですが、そんなに興味がない方や今まで触れる機会がなかった方に訪れてもらうのは難しいと感じました。
イベントなどに出店して、絵本が目的ではなく訪れた人たちにも偶然手に取ってもらえたら、絵本をより多くの人に好きになってもらえるのではと考えたからです。
———たしかに、イベントだとお目当てのお店以外にも、出店している他のお店を気軽に覗いてみようと思いますよね!より多くの人に出会えるのは移動型店舗ならではですね。
今の私におすすめの絵本を選んでもらう
次に、吉田さんに私におすすめの絵本を選んでいただきました。
———最近自分の老後のことを考える機会が多く、心配や不安があります(笑)。そんな私におすすめの絵本ってありますか?
老後ですか?!えーっと、ちょっと待ってくださいね…。「急がないで」というメッセージを込めて、こちらはいかがでしょうか?
せっかちなハチドリさんをのんびりやのカタツムリが心配する、というお話しです。
ハチドリとカタツムリ?正反対のような一羽と一匹が主人公の物語、気にならない訳がありません!絵もとてもきれいな色合いで惹かれます。
購入した絵本の紹介
今回購入した絵本は2冊です。
●「いっこにこねこ」しまだ はるお 1,078円(税込)
なんとサイン本でした!嬉しい!
絵本作家のしまだ はるおさんの商業絵本デビュー作。小さなお子さん向けの数字を楽しく覚えられる絵本です!
テンポが良くて、かわいい猫さんに思わず笑顔になってしまう内容なので、読み聞かせをしたらお子さんもとても喜んでくれそうです。
読み聞かせに慣れていない親御さんにも、初めての1冊として挑戦しやすい絵本ではないかと思います!
こんな素敵な絵本で数字を覚えたら、算数が好きな子に育ちそうですね(笑)。
●「せっかちなハチドリ」作:安東 みきえ/絵:降矢 なな 1,760円(税込)
もうひとつは、吉田さんにおすすめしていただいた1冊です。
世界一小さい鳥のハチドリはどこかにあると言われている「黄金の花園」を探すために、毎日大忙しで飛び回っています。
その様子をいつも見ているカタツムリのマイマイは、そんなに毎日がんばりすぎていては羽を傷めてしまうと心配して声をかけますが、ハチドリはとにかくせっかちなのでその言葉を心に留めません。しかし、ある日ハチドリは急ぎすぎたせいで道に迷ってしまいます…。
シンプルな物語ですが、大人でもドキっとしてしまうような言葉が散りばめられています。
マイマイは時に殻に閉じこもってしまうこともありますが、それは「心を無くさないようにするため」だと言います。前に進むことも大切ですが、時には立ち止まって自分と向き合い、内省する時間も必要なのだということを感じました。
今という時間を大切にゆっくりじっくり歩んでいけば、それがきっといつか道しるべになってくれる気がします。
私もハチドリのように、本当に存在するのかも分からない「黄金の花園」のような「黄金の老後」を求めて、急ぎすぎていたのかもしれません(笑)。
吉田さん、私の無茶振りに快く応えて下さって、素敵な絵本を教えていただきありがとうございました!
いま力を入れているのは絵本を通した「グリーフケア」
絵本の販売活動と並行し「絵本専門士」として、絵本の普及のための講演なども行われている吉田さん。
最後に今後のことをお聞きしました。
吉田さん:今後も引き続き、今まで縁がなかった人たちのところへ直接絵本を手渡して行きたいと思っています。また、最近力を入れていきたいと思っているのは「グリーフケア」です。
グリーフケアとは、大切な人やペットとの死別・別れをはじめとして、さまざまな愛情やものを喪失した人の悲しみに寄り添いその心をケアすることを指します。
まだ勉強中ですが、絵本を通してそういった方たちの力になりたいと思っています。
絵本は、愛情を伝える方法でもあり、悲しみに暮れる人にそっと寄り添ってくれる存在でもあるんですね。
みなさんも、吉田さんが届けるあたたかい物語を自分や大切な人へ手渡してみられてはいかがでしょうか。
「出張絵本屋モフbooks」さんのイベント出店や活動情報は、Instagramで知ることができます。
ぜひチェックしてみてくださいね!
INFORMATION
店名:
出張絵本屋モフbooks(ブックス)
住所:
※移動販売店のため、販売先はInstagramよりご確認ください。
一人当たりの予算:
¥1,000〜¥2,000
※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。